東京海上日動火災保険はBusinessTechと提携し、ビジネスマッチングプラットフォーム「ビジクル by 東京海上日動」を開発しました。2024年度から、このプラットフォームを活用して保険商品だけでは解決できない課題について、全国に広がる保険代理店や社員を通じて、ソリューションを紹介するビジネスマッチングを本格的に展開しています。保険代理店とともに複雑化・多様化する社会課題に直面する顧客に対し、保険の領域に留まらないソリューションを提案し、価値提供領域の飛躍的な拡大に挑戦しています。
東京海上日動火災保険は、社会課題や経営課題の複雑化・多様化が進む中、従来の保険商品にとどまらないソリューションを提供するビジネスマッチングの推進を通じて、顧客や社会の“いつも”を支え、“いざ”をお守りするパートナーとなることを目指しています。中期経営計画(2024~2026年)においては、ソリューション事業の持続的な成長がグループの重点戦略に位置付けられています。
ソリューションは「モビリティ」「レジリエンス(防災・減災)」「GX」「人事関連」「サイバー」「ヘルスケア」の6つを中心に展開。これらの課題は損害保険においても重点取組としていた領域でもあります。このソリューション事業専用に開発したビジネスマッチングプラットフォームが「ビジクル by 東京海上日動」です。
東京海上日動火災保険の営業担当社員が活用するとともに、同社と委託契約を締結した全国の保険代理店にも提供することで全国的な販売体制を構築しています。新たなソリューションも順次追加していく予定です。
ソリューション事業は、顧客が抱える課題やリスクの中で、保険だけでは解決できない領域について、同社のグループ会社や提携企業のソリューションを顧客に紹介し、解決に向けた支援を行うものです。同社の強みは、100万社に迫る法人顧客網という損保ビジネスにおける顧客接点の多様さと豊富さ。この事業を始める前から、保険の更新時などに保険では解決できない様々な経営課題を顧客から聞く機会も多く、今後は顧客接点を活かし、幅広い領域で顧客の課題解決に取り組んでいくことになります。
「これまでは損害保険業における業務範囲規制の観点から、保険商品以外のソリューションを提供するハードルが高かったのですが、保険業法改正による規制緩和があり、保険会社でも提供できるソリューションの幅が広がりました」と話すのは東京海上日動火災保険営業企画部マーケティング室ユニットリーダーの小野かれん氏。「保険だけでは顧客が抱える課題の全てを解決することができない場合があるので、価値提供領域を拡大し、顧客の課題と我々の解決策のギャップをどんどん埋めていきたいです」(小野氏)とソリューション事業の狙いを語ります。
東京海上日動火災保険営業企画部の小野かれん氏
東京海上日動火災保険が汎用ビジクルを活用するのではなく、独自プラットフォーム「ビジクル by 東京海上日動」を開発したのは、営業プロセスを統一してビジネスマッチングのソリューション事業の提案活動を後押しするためです。
「顧客への提案から、パートナー企業に繋いで進捗管理することを1つのプラットフォームで実現したかったこと、損保代理店さんにもご利用いただけるツールとして展開したかったからです。汎用ビジクルはメインの利用法人が金融機関で、保険会社の顧客との関係性も得意領域も異なります。なるべく保険と親和性のある領域の商品を選別して取り揃え、弊社で選んだパートナー企業に繋いでいくために、独自のプラットフォームを構築しました」と小野氏が独自プラットフォーム開発の理由を語ります。
BusinessTechと独自プラットフォームを共同開発することで、KPIを設定し、定期的な分析を通じて、いろいろとアドバイスしてもらえるのは大きなメリットです。また、顧客の経営課題を掘り下げるために、共同で作成した課題起点対話用チラシには人材確保や売上拡大など4つの経営課題のチェックボックスがあり、裏面に各チェックボックスに対応するソリューションが明記されていて、顧客の前向きな反応を多く得ているといいます。
「実際、このチラシがきっかけとなって大口案件の獲得にもつながっています。顧客と経営課題を考えるきっかけとなる、いいツールになっています」と話すのは東京海上日動火災保険営業企画部マーケティング室ユニットリーダーの山田雄飛氏。
同社の強みといえば、損保ビジネスにおける顧客接点の豊富さと多様さにあります。しかし、実際に保険以外のソリューションを顧客に紹介するソリューション事業を推進していくと、2つの課題が浮き彫りになりました。
「1つは顧客の課題の真因に迫れないことでした。もう1つは保険以外の商品を売ったことがないため、提案がなかなかうまくいかないことでした。」(山田氏)
保険以外のソリューションも活用して顧客の課題解決を進めていくには従来の営業スタイルだけでは至らない点も多々あり、課題解決のソリューションを提案するためのストーリーや具体的な対話事例を本社からも示す必要がありました。
東京海上日動火災保険営業企画部の山田雄飛氏
営業担当社員や顧客、パートナー企業へのヒアリングを重ね、2024年10月に保険と親和性の高いソリューションについては、全店で提案ストーリーの型や好取組事例を共有すると、提案数や成約数が徐々に増えていきました。
「ビジクル by 東京海上日動」では、商談依頼から成約までの営業の行動量が測れるため、PDCAサイクルをどんどん回していけて活用しやすいのです。「『ビジクル by 東京海上日動』がなかったら、ここまで商談依頼は獲得できなかったと思います。」(小野氏)と独自のビジネスマッチングプラットフォームの効果を実感しています。
同社の企業文化として、新しいことを始める場合、「ベテランも若手もスタートラインは一緒」という価値観があります。そのため新しい商品が出ると、若手社員でも上司から「この支店で最初にお客様に提案してみようか」「支店で一番詳しくなってみようか」と声をかけられます。
「ソリューション事業においても、入社3年以下の社員でも成約までいくことが増えています。こうなると先輩社員も強く刺激を受けるので、非常に良い相乗効果が出ています。」
同社は「ビジクル by東京海上日動」を保険代理店にも提供しています。紹介手数料はソリューションごとに異なりますが、そのうち一定割合が保険代理店に委託費として支払われます。
保険代理店はお客様のニーズや課題に合わせたソリューションを紹介することが可能で、保険+αの価値提供の動きも徐々に活発化してきています。たとえば、保険の面談は敬遠されることもあり、なかなか開拓できなかった大口のターゲット企業にソリューション事業の情報を提供することで面談のハードルが下がる事例も出ています。
また、保険+αの価値提供ということで競合他社と差別化が図れ、既存の顧客に保険の更新をしてもらいやすくなったり、新たな保険の提案を受け入れてもらいやすくなったりと保険本業との相乗効果も期待できます。
「参考になる大きな事例を出すことと、小さな成功体験を各部店や代理店で作っていくこと。この2つを同時にリードしていきたいと考えています。」(山田氏)。
今後の展開として同社では「ビジクル by 東京海上日動」によって、社員や保険代理店による保険にとどまらないソリューションの提案活動を後押しし、保険事業のさらなる拡大、保険の枠を越えた保険+αの価値提供を推進していきます。