取次件数150%の増加…
ビジクル導入で成果を出す仕組み

2024年10月に開催した「第2回ビジクル会」でビジクルを活用していただいている金融機関のビジクル活用事例の講演がありました。「ビジクル導入における利活用推進の取り組みについて」と題して、山口フィナンシャルグループ営業戦略部デジタル推進室(現DX戦略部)の仁田恭平氏にビジクル活用事例を紹介していただきました。

ビジクル導入後の取次件数増加率は150%

2023年10月に山口フィナンシャルグループがビジクルを導入した背景と目的は、「ビジマ商材が多く適切な商材がわからない」「経験の浅い担当者が顧客のニーズをどのように把握すればよいかわからない」「提案資料がどこにあるかわからない」「紙の同意書を徴収し、本部へはワークフローで取り次ぎの事務が必要である」ということが課題だったからです。

これらの課題に対して、事例検索や診断機能を活用して提案スキルを向上させる、同意書機能やソリューション検索を通じて、業務プロセスの効率化を図ることなど、ビジクルの導入目的を整理しました。導入後の効果測定は、成約件数をKPIに設定し、ソリューション提案ができる営業員を増やすことで契約件数の増加を狙いました。

運用体制は営業戦略部デジタル推進室(3名)が行いました。ビジネスマッチングの主管部署は営業戦略部法人事業室(2名)とグループ銀行である山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行の事業性評価部(各2名)でしたので、連携を取りながら導入準備・運用を進めていきました。導入時は週1~2回のペースで課題解決のためのミーティングを開催しました。

導入後の実績としては、1年で取次件数の増加率は150%、成約件数は109%でした。導入前は提案する商材に偏りが見られましたが、導入後は今まで取り次ぎ件数が少なかった商材も提案するようになり、顧客への提案の幅が広がりました。

ビジクル活用・定着・推進のための4つの工夫

導入準備から運用にかけては活用定着・推進のための対策(工夫)を4つ行いました。

1つ目は導入準備として現場へのヒアリングを実施し、各商材の登録シートの作成、事例等のコンテンツ収集、事前研修実施を行いました。

山口フィナンシャルグループ営業戦略部デジタル推進室(現DX戦略部)の仁田恭平氏

企画段階では現場のヒアリングを実施しておらず、現場の反応がわかりませんでした。最初の導入時に利用されないと以後も利用されないことが多く、そのためにも導入に向けて現場の意見を反映したいと考えました。そこでビジクルのデモ環境でのヒアリングを実施。ログインの操作時間をできるだけ短くしてほしいという要望があったので、社内ネットのトップ画面に専用のアイコンを設置し、ログイン画面にアクセスできるようにしました。

コンテンツ収集としては、既存のビジネスマッチング(ビジマ)商材が整理されていないという課題がありました。そこでリリース時に約300種類あるすべての有償ビジマ商材・関連会社商材が掲載されている状況を重視。既存のビジマ商材をビジクルの掲載に合わせカテゴリ分けして、整理を行いました。足りない商材等を明確化し、充足すべき商材を把握することができました。

事前研修は、研修後、利用するときにログインでつまずくことが多いので、操作の習得に終始してしまい、実際の営業で使えないことが懸念されました。そこで各地区の拠点でリアルとオンラインを組み合わせた研修を実施。初回のログイン設定や事例に基づく形で各機能の活用方法を説明し、顧客との会話で利用するイメージを掴んでもらうことを意識しました。

2つ目は、ビジネスマッチングの効率化として商材の一元管理や同意書の電子化を行いました。

商材の一元管理は、ビジマ商材やグループ会社のチラシ・パンフレット類の提案資料の格納場所がグループ銀行で統一されていなかったため、どこを探せばよいかわかりにくいという課題がありました。そこでビジクルのサイトで提案資料を一元管理することで、すぐに情報にアクセスできる環境を構築しました。

同意取得の電子化は、これまで紙ベースで同意書を徴求していましたが、徴求漏れや書類用意の手間がありました。また、営業手法を確立している行員はビジクルを利用しない懸念がありました。そこで同意取得フローを電子化することで業務を効率化するとともに、取次時には必ずビジクルを利用する仕組みにしました。

3つ目は、診断機能の活用として、オリジナルの診断を作成し、SFA(営業支援ツール)と連動した営業推進を実施しました。

当初、推進したい営業項目において、顧客のニーズを把握する適切な営業ツールがありませんでした。そこで戦略に応じて営業推進を行うため、自社オリジナルの診断を作成し、法人SFAとビジクル診断を組み合わせて営業推進を実施しました。

4つ目は、コンテンツの整備・拡充、プロモーションとして、チラシ・パンフレット・事例の定期的な見直し・拡充、ソリューションの定期的見直しによるラインナップ拡充、オリジナル診断の追加、ビジクルの利活用やビジマ商材に関する動画配信を行いました。

コンテンツの拡充としては、掲載している情報が陳腐化するとツールが利用されないという懸念がありました。実際、営業店アンケートでチラシ・パンフレットの拡充が要望の最上位になっていました。そこで提案資料や動画、成約事例を可能な限りビジマ先に提供してもらって掲載しました。半期に一度、取次件数の多いビジマ先へ掲載物の洗い替えを依頼しており、常に新しい情報が掲載されるようにしました。

プロモーションとしては、商材について短い時間で学習できるツールが欲しいとの要望がありました。そこでビジクルの基本的な利用方法を3分ほどのショート動画にし、ビジマ商材の紹介、推進方法にかかる動画をテーマごとに配信しました。

運用改善のための4つの工夫

運用改善のための工夫としては、4つの取り組みを行いました。

1つ目は利用状況や成約状況を確認し、部内で定期ミーティングを実施。各種施策とその振り返りを定期的に行い、PDCAを回すようにしました。2つ目はビジネスセクターとのミーティングを設定し、推進施策の変更や機能管理をしました。3つ目は現場の反映として、ビジクル専用の意見箱の設置や研修実施後のアンケートを実施しました。4つ目は、利用状況の公表による社員の意識付けのため、導入から半年は毎日支店別のログイン状況を掲載しました。現在はビジマの取り次ぎ実績や成約実績のダッシュボードを作成して公表しています。

強化している取り組みは、ビジクルのデータを活用したデータドリブンな営業推進を実施しています。社内のBIツール(Power BI)を活用し、ビジクルで得られた取り次ぎデータや社内で保持している企業データ、成約データをダッシュボードで可視化し、主に仮説立案等の営業活動に役立てるよう情報を発信しています。また、真に顧客の課題を把握し、適切なソリューションが提案できるよう、事業性評価活動を行うなかでビジクルを活用した研修を随時実施しています。

※本稿は、2024年10月4日に開催された「第2回ビジクル会」のビジクル活用事例「ビジクル導入における利活用推進の取り組みについて」の講演を再構成したものです。